JUULの未成年マーケティングの過ちがVAPE業界を危機に陥れる。

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アメリカの未成年者の電子たばこ使用が問題になっています。統計では5人に1人、20%もの高校生がJUULを始めとする簡易型の電子たばこを使用しているとされています。これはアメリカの成人男性の伝統的たばこの平均喫煙率に匹敵する数字です。伝統的なたばこの高校生の喫煙率は10%程度とされています。つまり通常のたばこより電子たばこを吸う高校生の方が多くなってしまっているのです。これは、たばこを吸うことなく電子たばこしか吸わない高校生が半分以上いることを示しています。FDAが強く問題視しているのがこの点です。JUULは同社のヴィジョンを「タバコを排除することで世界の10億人の成人喫煙者の生活を改善する」ことと示していますが、FDAはJUULが実際には未成年非喫煙者を新規ユーザーのターゲットにしていると非難しているのです。7月にはJUULが若者に的を絞ったインフルエンサーマーケティングに20万ドルを投じたことが明らかになっています。またJUULウェブサイトでのオンライン販売の際の年齢確認に不備があり、本人ではなくても購入することができてしまい、高校生にJUULが蔓延する一因になったとされています。

一方英国では成人男性喫煙率は米国とほぼ変わりませんが、18歳未満の電子たばこを使用する高校生は2%程度に収まっているとされています。また2%のうちのほとんどは伝統的たばこも吸う喫煙者で、電子たばこだけを吸う高校生の割合はほぼ0%と言われています。

成果を上げつつある英国の電子たばこ規制

英国ではTPD(Tobacco Products Directive)というたばこ規制が効果を上げつつあり、電子たばこのニコチンについても最大濃度は20mg/mlまでと定められており、54mg/mlといった高濃度のJUULが流通するアメリカのような環境とは異なります。また濃度だけでなく量についても規制があり、カートリッジなどのタンク容量は最大2mlまでと定められています。ニコチンを含むリキッドボトルの容量も最大10mlであり、手軽に高濃度のニコチンを連続摂取することができないよう制限されています。成人Vaperは多様なアトマイザーやMOD、リキッドを取り揃えて、都度リキッドを充填する手間を惜しまずに趣味嗜好としてVapingを楽しんでいます。

前FDA長官スコット・ゴットリープが指摘するように、JUULの特徴の一つは初心者でも手軽にニコチンを摂取できてしまう簡易でファッショナブルなデバイスにあります。吸い込むだけ、無くなったらカートリッジを取り替えるだけといった手軽さは、喫煙未経験の人でも簡単に乗り越えられるとても低いハードルです。それらを武器にJUULは非喫煙者の高校生をターゲットにSNSでインフルエンサーマーケティングを展開したとして、強く非難されているのです。

一般に伝統的たばこにおいても未成年者と非喫煙者へのプロモーション活動は禁止されています。英国のスタンスでは、電子たばこは喫煙者が伝統的たばこを辞められるキッカケになり得るならば利用しようというものです。電子たばこには長期使用による影響など不明な点が依然多いものの、伝統的たばこよりは害が少ないという立場をとっています。非喫煙者の入り口にならない限りは、伝統的たばこの代替的手段として確保しておこうという考えです。全ては分からないけれども、現時点で分かり得る情報を元にハームリダクション(害の低減)で対応しようという現実的なやり方です。

タバコの物質はどのくらい有害なのか?

タバコを吸うときに肺に入る毒性物質には、ベンゼン、アンモニア、ヒ素、鉛があります。化学物質は7,000種に及ぶとされています。ニコチンはけして無害ではありません。ニコチンは中毒を引き起こします。胎児に悪影響を及ぼします。心血管疾患の危険因子を増加させる可能性があり、また明らかに脳の発達に影響を与えます。しかし重要な点は、ニコチンはたばこ製品から得る成分の中で最も有害な成分ではないということです。

一方でニコチンは認知に有益な効果がある可能性も指摘されています。それは例えば注意力を維持するのに役立つとされものです 。記憶喪失障害、アルツハイマー病、不安障害、うつ病に対する研究もいまだに進められています。ニコチンの潜在的な可能性はまだ完全には明らかになっていません。

ただ脳の発達に影響があるのは明らかであるので、未成年者がニコチンを摂取するのは食い止めなければならない。一方で様々な有害成分を含む伝統的たばこを嗜む喫煙者に対しては、害の低減手段を提供しなければならない。これが英国における電子たばこに与えられた立ち位置です。これを踏み外す限りは全面禁止も辞さない、これが現にアメリカで起こっている騒動です。そしてそれを大きく踏み外したとして非難されているのがJUULです。立場上、VAPEや電子たばこは未成年の喫煙の入り口にはなることは許されないのです。

日本のSNSにも影響を及ぼしている?

余談ですが、日本にも思わぬ形で影響が出始めているようです。先述のJUULのSNSでのインフルエンサーマーケティングへの非難の影響からか、日本のYouTubeなどでも電子たばこへの規約厳守が厳密化されているようです。そもそもニコチン0mgのみの製品しか流通せず、未成年防止を自主基準で業者が設けている日本とアメリカとでは背景が異なりますが、YouTubeはアメリカのグーグル(アルファベット)のサービスということもあり、規制物質にたどり着く情報(ニコチンやTHC(CBD))源を遮断する姿勢を強めているようです。日本では製造たばこを除いて法律上一切のニコチンの販売・譲渡は禁止されています。しかし中にはニコチン入り製品を販売する海外サイトへのリンクが貼られている動画があるなどとして、いくつかの動画が削除されたりアカウント停止になるなどの処置が講じられているようです。

結果的に独自特許のニコチン(ソルト)という武器に奢ってしまったJUULが及ぼした影響は、世界にまで及び破壊的でさえあります。これからFDAによる新ルールという審判を待つことになりますが、マーケティングの過ちが自らだけでなく業界全体の首をも絞める結果となってしまうかもしれません。

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